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ProjectStoryプロジェクトストーリー

vol.3

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※バイオマス発電所の画像はイメージです。

Outline

プロジェクト概要

2020年、栃木県内に新設された木質バイオマス発電所。発電用蒸気ボイラーに送る燃料(木質チップ)の受け入れから貯留、ボイラーに投入するまでのシステム、及びボイラーに付随する珪砂循環設備を手掛けたのが、椿本バルクシステムだった。これまでバイオマス燃料の搬送設備の実績は十分な同社だが、計画段階から参画し、フルスコープで対応するシステム案件は数十年ぶり。また発電所の重要システムを制御込みで対応するのは過去最大規模であり、初めての試みだった。
最高受注額を記録することになるプロジェクトの推進を担ったのは、技術営業歴15年を超える今井と、機械設計職として当時、中途入社5年目だった林。異なる立場から現場を支えた二人は、互いの視点を持ち寄りながら、前例のない案件を一つずつ形にしていった─。

Member

プロジェクトメンバー

営業本部 大阪営業部 大阪営業グループ

今井 哲朗(技術営業職)

/2007年入社

プロジェクトでの役割

同プロジェクトマネージャー。体制構築やマネジメント要領書の作成、スケジュール調整や仕様のすり合わせ、コスト交渉など、プロジェクト推進の要となった。

技術生産本部 技術部 システム2グループ

林 満雄(機械設計職)

/2015年入社

プロジェクトでの役割

設計主担当として、燃料搬送システム全体の仕様まとめから詳細設計までを一貫して担当。協力会社や顧客との調整も行い、設計工程管理やトラブル対応にも尽力した。

クライアントの信頼の先にあった

高い壁と未知への挑戦

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同クライアントとは過去にも取引があった。2016年には大分県内の別の設備に関わり、珪砂循環設備の一部であるコンベヤおよびその他付帯設備を納入した実績がある。しかし次の栃木での新規発電所建設計画の声をかけてもらい、詳しく話を聞くと、これまでとは比較にならない、広範囲にわたるシステム全体の提案だった。営業担当の今井は、当時をこう振り返る。
「大分県内の設備での実績や、定期的な訪問によって関係性を築いてきた結果、このお話をいただきました。当社は様々な粉粒体に対応したコンベヤを納入してきましたが、バイオマス燃料は粒度も水分量も不安定。非常に搬送が難しい素材である上、今まで携わったことのない範囲のシステム全体を担う案件でしたので、本当にやれるのか、技術・製造・調達部門を含めて深く協議しました」
発電所は、人々の生活インフラを支える「絶対に止められない施設」。搬送ラインの停止は莫大な損失を招くことになる。
「リスクや不安はもちろんありましたが、同時に期待感もありましたね。搬送機器以外も含めたこれだけの規模の案件は、当社の実力を一気に高めるチャンスですし、これを乗り越えれば次につながる!という思いで、プロジェクトに臨みました」

現場の声と向き合い

地道に作り上げた最高のシステム

本案件は、従来のコンベヤに関する知見や技術、蓄積されたデータだけでは構成できないものだった。
機械設計担当の林は語る。
「納入した燃料投入システムは主に燃料を受け入れて貯留するライン、貯留した燃料を供給するライン、ボイラに燃料を定量投入するラインから構成され、これに加えてボイラから排出された珪砂から異物を除去してボイラに還流させる珪砂循環設備もサブシステムとして納入しました。
ラインを構成する機器は、各種搬送機、貯留サイロ、選別機器(篩)、集塵機、ベルトコンベヤー、計量器、定量投入機や各種センサーとユーティリティ(圧縮空気等)など多岐に渡ります。そのような当社の供給するシステムを、本プロジェクトに関係する建設会社や電気設備会社、制御通信会社やボイラを担当するプラントメーカ等が所掌する設備と接続し、発電所という大きなユニットを構成させる為、各社との仕様協議に必要な会議や打ち合わせは数十回に及びました。時には当社が先導しながら、プロジェクトを推し進める役目を担う為、その重責や緊張感は計り知れないものがありましたが、一つの目的に向かって様々な企業が協業するそのパワーは凄まじく、色々なプレッシャーも掛かる反面、とてもやりがいのある仕事でした。
燃料が初めてボイラに投入された時は感慨深いものがありましたが、当社の設計活動に協力いただいた現場運営員の方々を始めとする様々な方からいただいたアドバイスが実を結んだ瞬間でもありました」
また、今井もその道のりを振り返る。
「有に30社を超える協力会社と、機器選定・レイアウト設計・制御仕様のすり合わせを何度も重ねました。デザインレビューは20回近くに及び、またクライアントの意向を反映して大幅な見積改定を3回も行い、その度に林さんと頭を悩ませました(笑)」

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それぞれの立場、思い。

丁寧に向き合って同じゴールを目指す

クライアント社長の前でプレゼンを終え、無事契約を獲得したのは2017年6月末。しかし、ホッとしたのも束の間、二人の前にはさらなる高い壁が待ち受けていた。正解のないものを、正解へと導いていくプロセスである。プロジェクトマネージャーとしてスケジュール調整を担った今井は、システムの機械制御領域において、顧客との認識の違いに直面した。
「ボイラーにどれくらいの木質チップを搬入するかをプログラムで制御するのですが、当初その制御方法の考え方に大きな違いがありました。どちらが正しいというのではないんです。ただ、目的に対してどの方法が最適か、何度も打ち合わせや資料の修正を重ね、さらに要望変更によるコスト波及にも粘り強く対応しました」
設計から工程管理まで担当した林も、こう振り返る。
「関係者が多い分、様々な思いや考えが交錯します。顧客の要望、製造側・施工側の都合、それらすべてを受け止めたうえで、自ら答えを導き出していくことが難しかったですね。また、チップの産地や状態によって搬送効率が変動するため、細かな調整が欠かせませんでした。現場でのテストを重ねながら、一つずつクリアしていきました」

いわばアクセルとブレーキ

支え合って乗り越えた高い壁

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プロジェクトは最終的に12名のメンバーを擁する大所帯となり、2020年には無事、発電所が稼働を開始。以来、一度も止まることなく運転を続けている。現場からは今も感謝の声が届き、林と今井の努力が確かな形になったことを実感させている。
今回のプロジェクトを通じ、今井はより広い視野で設備全体を捉える力を、林は柔軟に対応できる設計力を身につけたという。時にはぶつかり合い、時には励まし合って大きな壁を乗り越えた二人の間には、同志のような空気感が漂う。林は、
「僕がアクセルで突き進んでしまっても、今井さんがブレーキで止めてくれるんです。今井さんの俯瞰した意見にいつも助けられました。また未知の領域への挑戦を乗り越えたことは、大きな自信になりました。この経験を他分野でも活かしていきたいですね」。
一方、今井も
「椿本バルクシステムには、前例にないことでも挑戦してみよう、という風土があります。日々の業務に捉われ過ぎず、ぜひ、いろいろな世界があることを知ってほしいですね。私は次の世代が様々なことにチャレンジできる、そんな環境を作っていけたらと思います」。
高い壁を乗り越えた二人は、今日も後陣に頼もしい後ろ姿を見せながら一歩先を進んでいる。